まったく新しい浸透技術のnanoPDSとは? 『nanoPDS』(ナノパーティクルデリバリーシステム)とは、新しい浸透技術の一つで、DDS(ドラッグデリバリーシステム)を応用しています。この技術では、高機能成分をナノ粒子にして、体内に吸収しにくい高分子の原料を皮膚から吸収することができます。非加熱かつ無水形で成分の性質を壊すことなく、有効成分そのものを皮膚の奥深く、角層までダイレクトかつスピーディーに届けることができます。DDSは、体内における薬の投与量・部位・タイミングなどを細かくコントロールし、薬の効果を最大限に発揮させ、副作用を減らし、患者の負担を軽減する技術ですが、nanoPDSはDDSをベースにしています。親水性の成分を界面活性剤で包み、数百ナノメートルサイズの小さな粒子にして油中に分散させることができます。この技術により、皮膚への浸透性が向上し、通常、分子量が大きい親水性の成分は、皮膚のバリアー機能を通過できませんが、この技術を利用することで皮膚内部へ浸透させることができます。また、皮膚内部へ浸透したタンパク質などは活性を保持し、本来の特性を維持し、しっかり機能することが研究結果で分かっています。nanoPDSは、ビタミンCやヒアルロン酸などの高分子、不安定な成分の経皮デリバリーが可能で、化粧品開発に応用されています。今後、多種多様な化粧品以外での成分にも応用が期待されています。 化粧品成分は基本的に浸透しない 化粧品の成分は、通常、肌に浸透しにくいと言われています。これは、成分の分子量が大きすぎて体内に入り込めないためです。正常な皮膚には、分子量が500以下の成分が浸透する目安となっています。分子量とは、原子量を全て足したもののことで、水の分子量は、H=1.010 + O=16.0で18.0となります。そのため、水は皮膚を通り抜けていきます。お風呂に入りすぎると、指がふやけるのは、水分子が肌に浸透したためです。 美容成分として有名なヒアルロン酸の分子量は100万前後、コラーゲンは30万前後で、これらの分子量は大きすぎて、通常は肌に浸透しません。また、脂溶性と水溶性の両方の性質を持つ成分は、肌に浸透する力が強くなります。これは、肌の性質に関係があり、角質層は脂溶性の成分が吸収されやすく、下層には水溶性の成分が吸収されやすくなっているからです。角質層を取り除くと、肌の吸収力が上がりますが、角質はバリア機能もあり、頻繁に取り除くと肌に刺激を与え、肌トラブルの原因になることがあります。 PDS技術は、分子量が200万くらいの高分子原料でも、経皮吸収を可能にする画期的な技術です。美容成分を粒子状態でナノコート(油分)することにより、肌に親和性を高め、奥深くまで届けることができます。 皮膚粘膜からの吸収制御型DDS DDSとは、薬の体内での動きを制御することにより、薬の効果を高め、副作用を軽減し、患者のQOLを向上させるシステムです。薬剤の構造には、薬効、安全性、安定性、吸収性、持続性、標的指向性などの必要な性質をすべて組み込むことはできないため、近年ではペプチド、タンパク質、DNA、RNAなどの新しい物質にDDS技術が注目されています。 DDS技術には、(1)ターゲッティング(標的指向型DDS)、(2)放出制御(放出制御型DDS)、(3)バリアーの通過・吸収促進(吸収制御型DDS)の3つの基幹技術があります。ターゲッティングは、病変部位へ集中的に薬物を到達させる技術で、受動的・能動的ターゲッティングに分類されます。放出制御は、薬物が溶け出すタイミングを投与後の経過時間によってコントロールする技術です。バリアーの通過・吸収促進は、皮膚・粘膜などからの薬物の吸収改善や血液脳関門通過の技術であり、「nanoPDS超皮膚浸透技術」は、このバリアーの通過・吸収促進を実現した画期的な技術です。 皮膚深部まで浸透させる粒子伝達 高速で撹拌することで、水に溶かした親水性の薬物と油に溶かした疎水性の界面活性剤を混ぜ合わせ、安定なWO型のエマルションを作ります。その後、この中の水分を除去し、nanoPDSにします。この技術により、高濃度かつ大量の物質を皮膚深部に素早く届けることが可能になりました。従来は分子量が500以上の成分は安定化して真皮層に到達できないとされていました。通常、肌の表面に留まり、肌の奥には浸透しないとされています。これは、私たちの外表面が皮脂膜や角質層の細胞間脂質によって保護されているためです。しかし、nanoPDS技術は、分子量500~200万の高分子原料を吸収できる技術であり、ヒアルロン酸などを粒子状態でナノコート(油で包む)することにより、皮膚に浸透させることができます。そのため、肌の奥深くまで薬物を届けることができます。 高分子ヒアルロン酸を経皮浸透させる PDS技術でヒアルロン酸を油状基剤に分散させることにより、通常の水溶性のヒアルロン酸よりも約3.6倍多くのヒアルロン酸が皮膚に浸透することがわかりました。これは、ヒアルロン酸が疎水性の角質層を容易に通過し、表皮や真皮に輸送されやすくなったためです。実際に、皮膚の断面を顕微鏡で観察したところ、ヒアルロン酸が十分浸透していることが確認されました。一方、通常の水溶性のヒアルロン酸では、角質層部分には蛍光がみられますが、他の組織では蛍光が非常に弱いため、皮膚深部まで浸透する量は非常に少ないということがわかりました。 nanoPDSの有用性と将来性 PDSは高い汎用性を持つと考えられていて、化粧品の分野での応用に加えて、医薬品や食品など、さまざまな分野での応用が期待されています。医薬品においては、従来は注射などで投与する必要があった薬剤でも、皮膚から吸収されるようになることで、治療に使用できるようになります。また、従来はお子さまやお年寄りには投与が難しかった薬剤も、皮膚からの吸収によって負担を軽減できるため、より広い範囲での治療に利用できるようになります。 また、食品分野では、水に溶けにくい栄養素や脂溶性ビタミンを、皮膚から吸収されるように加工することで、より効率的な栄養補給が可能になると期待されています。これにより、高齢者や病弱者など、食事で必要な栄養素を十分に摂取できない人々にとって、より健康的な生活が送れるようになると考えられます。 将来的には、nanoPDS技術の進化によって、より高い効率での吸収が可能になると期待されています。また、この技術によって、新たな高分子化合物の開発や応用も期待されています。今後、医療や食品分野において、nanoPDS技術がより多くの人々に貢献することが期待されます。 食品応用化粧品開発高分子化合物ビタミンC経皮浸透nanoPDSヒアルロン酸化粧品成分浸透技術美容成分バリアー通過ドラッグデリバリーシステム経皮デリバリー分子量DDS技術皮膚バリア機能肌浸透高機能成分親水性成分ナノ粒子脂溶性成分皮膚吸収角質層高分子原料医薬品応用経皮吸収 塚田総院長のカウンセリングムービー 前の記事 長寿遺伝子を活性化させる「NMN」は夢の若返り栄養素 次の記事